2015年4月17日金曜日

江戸しぐさ 思いやりと譲り合い


200年前、産業革命に湧きかえっていたロンドン。当時、ロンドンの人口は86万人。世界中の富豪家たちの憧れの街パリは54万人。そんな時代、極東の小国、江戸の人口は何と100万人。江戸(今の東京)は世界一の過密都市でした。全国津々浦々から様々な人々が集まり、ひしめくように暮らしていた。が、意外にもトラブルが少なかった。そのワケは町人衆が無用なトラブルを避け、互いに気遣いながら暮らしていける暗黙のルールがあった。それが「江戸しぐさ」と言われるものです。今日、細やかな他人への気配りを称して“OMOTENASHI”(おもてなし)と言われる多くはこの江戸しぐさがベースになっています。先人たちの快適に生きる知恵の数々。 約束を守る。他人の時間をムダにしない。見て分かることは言わない・訊かない。自分の領分を知る。肩書きではなくその人の仕草や行動を観て判断する。ルールを守れる人は「オトナ」。守れない人は「カギ」。大人は雅児を相手しない。今日でも街中でよく観かける代表的な江戸しぐさは…

○肩すかし(カニ歩き)

狭い道、人込み、乗り物の中ですれ違う時、肩が触れたり、ぶつからないように、お互い体を避ける。狭い通路ですれ違う時、お互い体を横向きでする。
※スクランブル交差点の人々がスムーズに行き来するのはこのルールなのではないか。

○傘かしけ
雨の日、道ですれ違う時。相手に傘のしずくをかからないように、お互いに傘を斜め外向きに倒す。

○拳浮かし
乗り物の中や待合室のベンチに腰掛ける時、他人が来たら、拳一つ分、腰を浮かせ、ヨコにズラす。そうすることで人が座れるように席を作る。

○七三歩き
道を歩く時、3の幅の中だけで歩き、7の幅は開けておく。急ぐ人はその7の方を進む。
※エスカレーターで静止する側と移動する側が分かれるのはこのルールなのではにか。

○片目だし(往来しぐさ)
部屋から廊下で出来る時、路地裏の角を曲がる時、いきなり飛び出さない。一度立ち止まり、左右確認。歩いてく来る人がいれば、その人が通り過ぎてから出る。

○ウッカリ謝り
人混みの中で、誤って接触した場合、<ごめんなさい>と声を掛ける。<失礼しました>と軽く謝る。お互いに相手を譲り合う気づかいをする。

人としてすべきこと。すべきでないこと。付き合い方。言葉使い。「顔は二の次」という表現があります。これも江戸しぐさの一つ。どんなに顔やスタイルが良くても、その人のしぐさ一つで心の中が分かる。しぐさが悪いと魅力がない。今でも200前の江戸っ子から学ぶことが実に多い。